蓄電池の寿命は、蓄電池を選択する場合、性能や価格と並んで重要なファクターとなります。
寿命は蓄電池の種類、充放電の方法、温度など使用環境に大きく依存します。
蓄電池の寿命が蓄電池の種類によって、どう異なるのか、また使い方で変わるのか、また、寿命とは違いますが、寿命に関連する使い方(充放電のさせ方)によって、性能の差がでるとしたら、これらの知識は知っておかないと大変不経済なことになります。
蓄電池の寿命は、一般的に分かりやすい年数で表すことは、使い方(充放電の方法)、温度などの使用環境に大きく依存するので難しいため、蓄電池の寿命と言う場合には、通常は充電・放電を何回行ったかという「充放電回数(サイクル)」で表されます。
充放電サイクル回数は、電気が蓄えられていない0%の状態から、容量一杯の100%まで充電し、その後、電気を使用して0%まで放電させてしまうことが1回(サイクル)の充電と定義されています。
従って、ややこしいですが、100%充電の状態から50%まで使用した時点で、使用を止めて充電を100%までし、次に50%になるまで使用して100%に充電したら、2回(サイクル)の充電回数にはならなくて、1回(サイクル)の充電と計算します。
そして、このような使い方の場合は、一般的には、2倍よりも多く使用できるようになります。
その理由は、蓄電池に対して過充電(100%充電状態になっても更に充電をし続けること)や過放電(蓄電池毎に決められているこれ以上使用を続けると蓄電池の寿命が短くなるという放電終止電圧以下になっても放電を続けること)を行うと激しく劣化する特性があるからです。
0%近くまで使用し、100%まで充電する使い方は、過充電、過放電になる可能性が高まるので蓄電池の寿命が短くなります。
平均的な充放電回数(サイクル)が200回程度の鉛蓄電池があるとすると、鉛蓄電池の場合は、100%充電から、50%の放電しかしないで、そこから充電をすると約2.5倍充放電回数が延び、また30%しか放電しないで充電を行う使い方をすると約6倍まで充放電回数が延びることが確認されています。
しかし、50%しか放電させない利用の仕方は、利用時間も半分になるので、電気を利用する総時間数から考えると、寿命としての充放電回数は2倍以上に延びて、ようやくメリットが出ることになります。30%の場合は、3.3倍以上延びてようやくメリットがでます。
尚、蓄電池の種類によって、過充電・過放電をさせない場合の充放電回数の増え方は異なります。また、装置に組み込まれている蓄電池では、プログラムで最適な充電・放電ができるようにコントロールされていることが多く、この場合は、過放電・過充電に注意を払う必要はなくなります。
ニッケル・カドミウム(ニッカド)蓄電池とニッケル水素蓄電池には「メモリー効果」という現象が起きます。
「メモリー効果」とは、蓄電池の容量を十分に残した状態で充電を繰り返すと、蓄電池がその状態を記憶して、まだ容量が残っているにも関わらず無くなってしまったと勘違いしてそれ以上使えなくなることです。そのため、これらの蓄電池では「放電終止電圧」近くまで十分に放電させてから、充電させないとフルに充電してもすぐに利用できなくなることが起こります。
尚、メモリー効果は、通常十分な充放電を繰り返す「リフレッシュ」によって解消されますが、充放電を過度に行うと寿命が縮まる可能性があります。
最近の小型電子機器にはリチウムイオン蓄電池が使用されているのでメモリー効果は小さくて、ニッケル・カドミウム蓄電池のような充放電をする必要性はありません。