蓄電池の種類

蓄電池の種類

蓄電池には、いろいろな種類の蓄電池があります。蓄電池の基本パーツである正極、負極、電解液に使用する材料によって以下のような種類の蓄電池が存在し、今後の研究によっては、また新しい蓄電池が出てくる可能性があります。 ここでは、蓄電池の種類についてできるだけ多く列挙し、経済産業省 資源エネルギー庁が平成21年に「蓄電池技術の現状と取組について」というテーマで公表している資料の中で、主な蓄電池としてあげているリチウムイオン蓄電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、及びNAS蓄電池の4種類に加えて、利用が減少してきていますが、まだ名前を聞くことが多いニッケル・カドミウム(ニッカド)蓄電池について少し詳しく説明することに致します。

蓄電池の種類に関する注意事項

蓄電池の種類に関する注意事項

<アルカリ電池、リチウム電池について>
・アルカリ電池
アルカリ電池という名称は充電できない一次電池(乾電池)としてマンガン電池より、少し高機能な乾電池として販売されています。
しかし、アルカリ電池という呼び方で充電機能がある蓄電池を意味することもあります。
この時のアルカリ電池の意味は、電解液にアルカリ水溶液を用いる蓄電池の総称です。
実用化されているアルカリ電池としては、ニッケル・カドミウム(ニッカド)電池、ニッケル・水素電池などがあります。
その他にも電解液にアルカリ水溶液を用いる蓄電池がありますが、アルカリ電池を蓄電池の意味として使う場合は、この2つの蓄電池のことと考えて良いでしょう。
従って、一次電池のアルカリ電池が充電もできる乾電池ということにはなりません。

・リチウム電池
リチウムが名称につく蓄電池は、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、リチウム電池などがあります。リチウム電池は、一次電池として広く利用されています。
一方、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池は、負極にリチウムイオンを吸蔵する炭素等を使い、充電できることから二次電池でありリチウム電池とは別の電池となります。

少し、話がややこしいですが、一次電池であるリチウム電池と同じ材料を使用して、充電できるリチウム電池も開発されています。そのため、リチウム電池と言う場合は、充電できる電池とできない電池の2種類が厳密には存在することになります。
更に、ややこしいことに蓄電池会社によっては、二次電池のリチウムイオン蓄電池を単にリチウム電池として表現しているケースも見受けられます。
尚、リチウム一次電池を蓄電池として利用する製品は実用化されていません。

実用化されている主な蓄電池について

1)リチウムイオン電池の概要
携帯電話やノートパソコンなどの電源として使用されています。放電を十分に行わないで充電することで起こる「メモリー効果」がほとんど起こらない。使わずに放置することで起こる自己放電も他の蓄電池より少ない。
通常、500回以上の充放電ができ、長期間の使用が可能です。
極端な過充電や過放電を行うと激しい発熱、破裂・発火する危険性があるので、リチウムイオン蓄電池は単体では販売されていません。使い方をコントロールできるように保護機構がついた製品に組み込まれて、その製品専用の電源として利用されます。

シャープ 蓄電池「JH-WB1201/JH-WB1202」
シャープ 蓄電池「JH-WB1201/JH-WB1202」

2)鉛蓄電池の概要
自動車やその他の電動車両用、小型飛行機などの電源として利用され、蓄電池ではなくバッテリーと呼ばれます。
自動車などの他にはビルや工場の非常用電源としても利用されます。
一般的に、他の蓄電池に比べると体積・重量とも大きく、重いのが特徴です。
また、電解液には希硫酸が使用されるため液漏れなどが起きる危険性があります。
鉛蓄電池は、主にガソリン自動車やその他の電動車用の電源として使用されているほか、ビルや工場の非常用電源としても利用されています。蓄電池の中でもっとも古い歴史を有しています。
しかし、まだ販売額も多く、世界的に見ると蓄電池の中では最大の市場規模があります。
特徴は、他の蓄電池に比べて、蓄電できる単位容量あたりのコストが安いこと、及び放電が微小電流から大電流まで安定して行えること、メモリー効果がないことです。
デメリットとしては、重量・体積あたりのエネルギー密度が低いことです。
特に体積あたりの密度が低いため同じ性能を得るには製品が大きくなってしまいます。
その他、過放電に弱い、電解液が硫酸のため破損すると危険、電解液が寒いと凍るなどがあります。
技術革新の激しい現代において、もっとも古い歴史がありながら、リチウムイオン電池には劣りますが、高い電圧を利用できること、累計の生産台数から蓄電池としての技術が成熟し性能が安定していることなどの理由で、まだまだ多くの製品に使用されています。
以前は、電解液が減少していないか点検し、補給が必要でしたが、現在はその必要がないバッテリーが開発されて使い勝手も上がってきています。

3)ニッケル・水素蓄電池
リチウムイオン蓄電池が実用化されるまでは、小型電子機器の電源として主に使用されていましたが、現在は取って変わられたため、10年以上前の2000年をピークに生産は減少を続けています。
現在は、充電できる乾電池として、旧三洋電機のエネループやパナソニックのエボルタブランドで販売されています。
電池の消耗の早い装置の乾電池として、何度も利用できるためコストセーブができます。
その他には、デジタルカメラ、ハイブリッドカー、ノートパソコンの一部の機種などに、まだ使用されています。
ニッケル水素電池の特徴は、もともとは人工衛星用の電力源として開発されたこともあり、長寿命・高出力・高容量であること、及び、過充電・過放電に強いことなどがあげられます。
デメリットは、自己放電(自然放電)が比較的大きいこと、メモリー効果があること、発熱が大きいため温度管理に気を付けて利用しなければならないことがあります。

4)ニッケル・カドミウム蓄電池(ニッカド電池)
ニッケル・カドミウム電池(ニッカド電池)は、ニッケル・水素蓄電池が開発されるまでは、広く使われてきましたが、カドミウムが有害であること、及びより高性能のニッケル・水素蓄電池が開発されて、現在は利用が減少を続けています。
しかし、近年、ガーデニング用ソーラーライトが普及し、その電源として利用されるようになったことから減少傾向に歯止めがかかっています。
尚、ニッケル・水素蓄電池も、リチウムイオン蓄電池が実用化されて、ニッケル・カドミウム蓄電池(ニッカド電池)と同じようにリチウムイオン電池に置き替わっていっています。
ニッケル・カドミウム蓄電池は、ニッケル・水素電池やリチウムイオン電池と比べるとデメリットが目立ちます。
そのデメリットは、カドミウムが有害であること、自己放電(自然放電)が多いため、消費電力の小さい機器を長く使う目的には不向きなこと、蓄電容量が小さいこと、メモリー効果があることなどです。

5)NAS電池(ナトリウム・硫黄電池)
NAS電池は、蓄電池メーカーの一つである日本ガイシ(株)の登録商標で、一般名称としてはナトリウム硫黄電池となります。
正極と、負極に使うナトリウム、硫黄を溶融させ、β-アルミナ電解質のイオン伝導性を高めて蓄電するので、この二つを溶融するために約300度から350度の高温状態にしなければ使用できない蓄電池です。
そのためか2010年、2011年に火災事故を起こし、火災原因の究明報告と事故対策がまとまるまで、生産停止が行われていましたが、2012年6月から生産が再開されています。
NAS電池の特徴は、大規模な太陽光発電や風力発電などの大容量蓄電池として使用することができる能力があることです。
そして、現在の蓄電池の中で比較的大容量を蓄電できる鉛蓄電池に対して、同じ容量を蓄電する場合、約3分の1の体積と重量で済むメリットがあります。
最大では20万kWhクラスの容量を持つ製品もできると言われています。
NAS蓄電池のメリットは製造に必要な主な材料が豊富にあること、コストダウンの余地もまだあることなどから、将来、大規模な太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーによる発電が増加したときでも蓄電が可能なことです。
デメリットは、高温状態にしなければ蓄電できないこと、火災などの事故が起きるとナトリウムが製品に使われているため水での消化活動ができないことなどがあります。

開発済または研究・開発中の蓄電池の種類

1) リチウム蓄電池
2) アルカリ蓄電池
3) リチウムイオンポリマー二次電池
4) ニッケル・鉄蓄電池
5) ニッケル・亜鉛蓄電池
6) 酸化銀・亜鉛蓄電池
7) レドックス・フロー電池
8) 亜鉛・塩素電池
9) 亜鉛・臭素電池
10)空気・アルミニウム電池
11)空気・亜鉛電池
12)空気・鉄電池
13)空気マグネシウム電池
14)リチウム・空気電池
15)リチウム・硫化鉄電池
尚、これ以外にも、高性能な蓄電池を目指して、いろいろな種類の開発・研究が行われています。