大型蓄電池普及の課題

大型蓄電池普及の課題

大型蓄電池普及の課題

大型蓄電池とは、ここでは家庭や企業などの電気を利用する側ではなく、電力を供給する側の電力会社の施設などに設置される大容量の蓄電池と定義します。
現在、電力会社は安価に電気を蓄電できないことから、電気の需要に合わせて発電量をコントロールしています。
しかし、東日本大震災によって原子力発電所の稼働が大半ストップし、発電再開の見通しが立っていません。
将来にわたって、原子力発電所の発電量が減ることになると、毎年、夏の電力最需要期には、節電を迫られ、計画停電に怯える不便な生活を送らなければならない可能性があります。
また、もし度重なる計画停電の実施が必要になるような事態になると、社会・経済的な活動に大きな支障と損失がでる可能性が懸念されます。
そこで、夜間の電気の需要が少ない時など電力会社の発電量が需要を上回れば、その余剰電力を蓄電池に蓄えて、需要が発電量を上回るときに利用するようにすると、節電や計画停電の危険性が少なくなります。

電力不足対策の揚水発電と蓄電池のコスト比較

電力不足対策の揚水発電と蓄電池のコスト比較

現在、電力会社は、電力不足が見込まれる時の対策として、夜間の余剰電力を使った揚水発電を行っています。
揚水発電とは、ダムに貯めた水を落下させて発電した後に、その水をそのまま下流の川に流さないで貯水池を作り、そこに貯めて夜間の安い電力を使用して、再びダムの上まで運び上げ、昼間にその水を再び放水して発電する方法です。
水の落下エネルギーで10の電気を発電できるとしたら、その水を元に戻すには、同じく10の電気が必要になります。厳密には、発電するときに水のエネルギーを100%電気にすることはできないので、同じ水の量をダムの上に戻す電気は、発電できる電気量を上回ります。
これだけを考えると、非常に無駄なことを行っていますが、これは電力会社が夜間の電気料金よりも昼間の電気料金が約3倍以上も高いため、この無駄を行っても電力会社は利益を得ることができるため行われています。
この揚水発電による発電コストは、現在の蓄電池のコストでは、蓄電池に蓄えるコストより約2分の1も安く発電できていると言われています。
また、揚水式発電設備の寿命は、蓄電池よりも約4倍程度も長いと言われており、そのコスト差は更に大きくなります。
尚、この揚水発電に使用する電力は、発電量を大きくしたり、少なくしたりすることができない原子力発電所の電力を利用していたので、原子力発電所の発電がほとんど止まってしまっている現在の状況は、揚水発電のコストは高くなります。
今後、原子力発電所の稼働がどうなるか、再生可能エネルギーの発電量の増加次第で、揚水発電のメリットが電力会社にとってメリットとなるかは不透明な状況です。
このため、当面は、大型蓄電池の課題はコストダウンを行って、揚水発電より安価に蓄電できることが課題となります。

大型蓄電池の課題に対する開発目標

コスト以外の課題として、技術的には発電所単位等に設置する場合、1箇所当たり最大で100万kWhの容量を持ち、定格出力付近で6〜7時間の連続充放電が可能な蓄電池が開発目標として定められています。
これらの開発が技術的、コスト的に可能かが課題となります。