定置用蓄電池とは、ここでは、一般住宅や事業所のあるビルなどに設置されるものとし電気の利用者が設置する蓄電池のことです。供給者側である電力会社が発電所や送・配電網の途中に設置する定置用蓄電池は含めません。
定置用蓄電池の目的は、停電時の非常用電源や太陽光発電などの再生可能エネルギーの発電量が不安定なため安定して利用できるように蓄電しておくことです。
電気の利用者にとっては、病院や工場のように一時的な停電や計画停電、節電で業務遂行に多大な影響が出る場合を除くと、蓄電池は一般的には無用なため必需品ではありません。そのため、ピークカット・ピークシフトへの協力や環境保護目的のためだけでは、利用者は蓄電池を設置する強いモチベーションが働きません。
従って、普及を進めるには、現行の昼間と夜間の電気料金制度を見直して、更に夜間の使用料金が安くなることが求められます。
昼夜の電気使用料金の差が大きいほど、蓄電池の投資費用が早期回収できて、その後は、利用すればするだけコスト削減になるからです。
現行の電気料金制度下と蓄電池の価格では、リチウムイオン電池の場合で、設置費用の回収には、約10年以上もかかると言われています。
リチウムイオン蓄電池は、寿命がその程度の期間でなくなるので、回収できたころに、また新規の投資が必要となり経済的なメリットはそれほど大きくありません。
蓄電池の価格が下がるにつれて回収期間は短くなりますが、蓄電池の価格低下には販売台数の増加が大きく影響するので、蓄電池が導入しやすくなるような料金制度面での後押しがないと普及スピードが加速されない可能性があります。
太陽光発電による電気を電力会社に売電する価格が、上がることは太陽発電装置+蓄電池の需要を強めますが、売電価格は将来的には下がることが明確になっています。
また、太陽発電装置+蓄電池での使い方では売電価格が、下げられるなどの問題もあります。
この問題には止むを得ない理由がありますが、蓄電池の普及にはマイナスに働くので、普及を促進するには何らかの対策が求められます。
電気料金制度が政策的に見直されて、昼夜の電気料金差が大きくなっても、蓄電池の価格が高価であれば、初期投資が大きくなるので、普及に大きな障害となります。
そのため、初期投資額を下げることは普及に大きくプラスに作用します。
家庭用の蓄電池は、設置しやすい価格になるか、投資コスト回収期間が極めて短くならないと普及が進みません。
そのためには、蓄電池メーカーがコスト削減を行う以外に、国や地方公共団体の設置援助(補助)金制度の拡充・拡大も必要です。
また、家庭で発電した電気の買取り価格をあげる政策を実施すると普及促進になります。
技術的には、家庭用蓄電池には高い安全性が求められます。
その他、小規模事業所などには、初期投資を低くできるリース制度が利用できるようにすることと、蓄電池を設置することで税金面での優遇策がとられることで普及が進むと期待できます。